マヤ遺跡探訪
COMALCALCO
コマルカルコ遺跡はタバスコ州に立地し、マヤ文化圏の最西端にあたります。 時代的には古典期前期 の後半から古典期後期に栄えた遺跡になります。

ここで異色なのは、石の代わりにレンガが使われている事で、メキシコシティーの人類学博物館の展示物を見るにつけ 気になる遺跡でしたが、2004年の正月休みにやっと訪問が実現できました。 周辺に石材が無かった為にレンガを使用する知恵が生み出されたものと思いますが、海を隔てて ローマの建築方法が伝わったという珍説もあります。

遺跡はタバスコ州の州都ビリャ・エルモサの北西約 60Km で 州道を直進出来ますが、西のカルデナスまで国道 180、 カルデナスから北へ国道 187 を通るルートが 道が整備されているので道に迷う事もなく早く着くと思います。  距離は 90Km 位で 空港から車で 90分でした。
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    (訪問日 2004年1月1日)
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 (Museo Nacional de Antropología, D.F.)

これはメキシコシティーの人類学博物館に展示されているコマルカルコからの出土品で、人面の塑像(左)と人物と文字が 刻まれたレンガ(右)です。

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 (Museo Nacional de Antropología, D.F.)

これもメキシコシティー人類学博物館の展示物で、レンガに刻まれたモチーフは、動植物、人物、幾何学模様等々いろいろです。  どういう目的で絵入りレンガが作られたのでしょう?

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 (Museo del sitio, Comalcalco)

遺跡に着いて車を停めると、駐車場の前に遺跡併設の博物館があります。 マヤのモチーフでモダンな気の利いた造りです。

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 (Museo del Sitio, Comalcalco)

遺跡の前にチョット博物館へ。 当然の事ながら、絵入りレンガは沢山展示されていました。 ガラス越しに光線を避けての 撮影で、斜めに撮ったものもありますが…  ワニやカニ、そして人物が器から何か飲んでいる絵など面白いですね。

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 (Museo del Sitio, Comalcalco)

当時建築に使われた排水管が展示されています。 素焼きでしょうか、レンガと材料、焼き方 はどう違うのでしょう?

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 (Museo del Sitio, Comalcalco)

これも展示品、大きな素焼きの土器で、日本にある甕棺と同じようなものです。 他のマヤ遺跡ではあまり見た記憶がありません。

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 (Museo del Sitio, Comalcalco)

塑像の彫刻ですが、後ろを向いた塑像にはレンガや崩れた漆喰の跡が見え、建造物に取り付けられていたようです。  収蔵品は他にもいろいろありますが、博物館はこの辺にして遺跡へ急ぎます。

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 (Plano del sitio)

博物館の前にある遺跡の案内板です。 強い太陽光と風雨の為に、かなり掠れてきています。

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見辛いので、拡大してちょっと加工させて貰いました。  地図の右上のグラン・アクロポリスは混みいっていて少々複雑です。 神殿(Templo)の番号はローマ数字で、 建造物(Estructura)は算用数字で振り直しました。
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 (Caseta de Servicios)

これが遺跡の入口、ここでチケットを買って入場します。  それでは早速入ってみましょう。

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 (Camino a Plaza Norte)

受付の建物を通って真っ直ぐの道を暫く行くと遺跡が見えてきます。
正面右、細い木の向こうが3号神殿、その左側に一番大きな1号神殿の基部が 見えます。
地図でそれぞれ III、I と示してある神殿です。

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 ( Templo I )
アクロポリスの北側から撮った1号神殿の全景です。                     画像

北の広場は1号、2号、3号神殿が調査・修復されていますが、広場西端のこの1号神殿が高さ25mと最も大きな建造物です。  手前に小さめの建造物が見えますが、奥から3号神殿と3号Aです。

レンガ色と黒ずんで見える部分はレンガが露出しているところ、白っぽくみえる部分はレンガの上に塗られた漆喰が残っているところです。
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 ( Templo I )
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1号神殿の上の部分を望遠で撮ると明るいレンガ色の上部神殿がよくわかります。 このピラミッドは登頂禁止、登れません。

コマルカルコの初期の建造物ではレンガは使われず、土に植物の蔓や鳥の糞を混ぜて基礎を作り、その上を貝殻を潰した 石灰に砂を混ぜた漆喰で塗り固めました。 遺跡内では歪んだ漆喰部分が各所で見られますが、この古い様式です。

西暦500年頃になって土を焼いた薄いレンガが使われるようになり、レンガを石灰で接着して外壁を作り、その上を 漆喰で固めて装飾を加えました。

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 (Escultura modelada, Templo I)

1号神殿基部の南東角に漆喰装飾が一部残されています。   上の部分が欠けていますが、前に出た2本の足と膨らんだ胸から、雨を呼ぶ蛙だと判ります。

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 (Escultura modelada, Templo I)

蛙の右側の人物像の部分。 神殿全体の装飾はどんなだったのでしょうか。

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 (Templo I, Templo II)

1号神殿南東角(左側)に覆いが見えますが、上の漆喰彫刻はこの覆いの下にありました。 また神殿の右に見えるのは 2号神殿で、ここからは多くの副葬品を伴った甕棺が発掘されています。  北の広場全体から甕棺が沢山見つかっており、ここは神事、祭事、葬礼等の重要な儀式が行われた場所のようです。

専門家によると コマルカルコの建造物は上部に高い屋根飾りの付いた パレンケの様式 だったそうで、 パレンケの勢力がここまで及んでいたようです。  屋根飾りは失われ、建築材料は全然違いますが…。

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 (Hacia Gran Acrópolis)

北の広場を終えて、緑の丘の向こうのグラン・アクロポリスの方へ行ってみます。 階段を登っていく人が見えますが、 ここを通って行きます。

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 (Templo VI y al fondo Templo VII)

これはグラン・アクロポリスの一角を占める、6号神殿と、大きな覆いのついた7号神殿、地図上の VI 、VII です。  

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 (Escultura modelada, Templo VI)

6号神殿の小さな覆いの下には漆喰装飾があります。 花の装飾に囲まれた天界の最高神、イツァムナだそうです。

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 (Escultura modelada, Templo VI)

7号神殿の壁面にはもう少し大きな漆喰装飾があります。

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 (Escultura modelada, Templo VI)

一枚上の写真左下の拡大ですが、立派な頭飾りと帯を締めて横向きに座った人物像があります。

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 (Templo V)

グラン・アクロポリスの北側から南の方角にある5号神殿 (地図 V ) を望みます。
ピラミッドの上の方に葬室がありますが、 登れません。

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 (Cámara funeraria, Templo IX)

5号神殿の南西奥にある9号神殿の葬室ですが、こちらは神殿の基部にあるので近くで見る事が出来ます。

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 (Cámara funeraria, Templo IX)

9号神殿の葬室は壁面に漆喰装飾が施され、この写真は正面壁の漆喰装飾です。  コマルカルコの王だそうですが… 当時の服装等がわかる貴重な資料です。 パレンケの漆喰装飾と似ていますね。

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 (Templo IV, Gran Acrópolis)

アクロポリス複合建造物の南端にある4号神殿 (地図 IV )です。 同じく葬室があります。

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 (Patio Hundido, Gran Acrópolis)

北側から見た複合建造物の中庭(地図の Patio Hundido = PH)です。 右奥のガラスの覆いの下には雨水溜めがありました。  正面奥は4号神殿になります。

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 (Patio Hundido, Gran Acrópolis)

これが雨水溜めですが、どういう使われ方だったのでしょうか?  この複合建造物には博物館にあった素焼きの筒状の排水管が配置されていましたが、この水溜めとはどういう関係 だったのでしょう?

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 (Parte sur de Gran Acrópolis)

アクロポリス複合建造物の南西の3号建造物から北西方向を見たところです。 5号神殿の上部と宮殿が望めます。

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 (Parte noroeste de Gran Acrópolis)

同じ3号建造物の北端から西側方向を見てみました。 宮殿の高い壁の右横奥には1号神殿のピラミッドが見えます。

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 (Parte noroeste de Gran Acrópolis)

宮殿内部の壁の下部には、祭事用具を収めた窪みがありました。

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 (Parte noroeste de Gran Acrópolis)

宮殿外側の列柱です。 レンガの上に漆喰が薄く残っています。 もっと厚い漆喰の上に装飾が施されていた筈ですが…。  

アクロポリスの複合建造物は神殿、建物が複雑に配置され、然も半分壊れている為に、何処が何処だかなかなか判り難く、 説明に誤りが無いと良いのですが。

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